配当金が年間数回分配される株式。その中でも配当利回りが高い銘柄は人気です。
しかし、配当利回りが高いからと言って、配当金込みのトータルリターンが高いとは限りません。
この記事では米国高配当ETFと米国の大型株で構成されるS&P500のリターンについて解説していきます。
Contents
米国高配当株ETFの紹介
まず、初めに米国高配当株ETFの紹介です。
米国高配当株ETFで有名なのは、SPYD、VYM、HDVがあります。
それぞれ、経費率と直近の配当利回りを下の表に示します。
ティッカー | 内容 | 経費率 | 直近配当利回り (23/12/6現在) |
SPYD | S&P500の中で配当利回りの高い約80社で構成 | 0.07% | 4.69% |
VYM | 米国株式市場で市場平均を上回る高配当利回りの銘柄400社以上で構成 | 0.06% | 2.92% |
HDV | 配当水準が比較的高位の米国株式で約80社で構成 | 0.08% | 4.31% |
VOO (比較用) | S&P500:米国を代表する大型株500社で構成 | 0.03% | 1.42% |
米国高配当株ETFの経費率はVOO(S&P500)に比べて高いですが、十分低い水準といえます。
配当利回りもETFによって違いますが、VOO(S&P500)の2倍以上となっています。
この表のみ見ると、高配当株は定期的に配当が支払われるので、有望な投資先と思われるでしょう。
しかし、株式投資にはインカムゲイン(配当益)とキャピタルゲイン(売却益)があります。
次に、各ETFの値動きを見てみましょう。
米国高配当株ETFとS&P500 ETFのチャート
配当金を再投資しない場合
米国高配当株ETFのSPYD、VYM、HDVと、比較用にS&P500 ETFのVOOの2016年以降のチャートを下に示します。
このチャートは配当金を再投資しない場合を想定しています。
配当金を再投資しない場合のチャート
(出典:Tranding View)
2016年以降のSPYDのリターンは+25.25%、VYMのリターンは+64.45%、HDVのリターンは+34.81%、となっています。
比較用のS&P500に連動するVOOのリターンは+136.56%です。
高配当株ETFに比べてS&P500 ETFのVOOのリターンが飛びぬけて高いですね。
配当金を再投資する場合
長期で運用し、資産を増やしていく段階の方は、配当金を再投資する場合が多いと思います。
下のチャートは2016年以降の配当金を再投資した場合のチャートを示しています。
配当金を再投資した場合のチャート
(出典:Tranding View)
2016年以降の配当金を再投資したSPYDのリターンは+79.78%、VYMのリターンは+109.71%、HDVのリターンは+79.08%、となっています。
対して、S&P500のVOOのリターンは+172.14%となります。
株価の動きは2016年を100とした場合、2013年末は SPYD 179.78, VYM 209.74, HDV 179.08, VOO 272.14となります。
8年間のS&P500のリターンは高配当株ETFの平均に対して1.44倍のリターンとなっていますね。
米国高配当株ETFの配当込みのリターンがS&P500に対して低い理由
なぜ米国高配当株ETFの配当込みのリターンがS&P500に対して低いのかと思う方もいると思います。
それには、なぜ配当金が支払われるのかというところから説明していく必要があります。
まず大前提として、企業は誰の物かと言われれば、それは株主です。
企業で働く人材や設備、不動産、剰余金、利益、経営者ですら、株主の物です。
人も株主の物?といわれるかもしれませんが、ここでは、人そのものではなく労働力のことを指します。
過半数の株主が同意すれば法律に反しない範囲で、株主は上に挙げた企業の資本を自身の思うように扱うことができます。会社に利益が発生すれば、すべて株主に還元させることもできます。
会社に利益が発生すれば、すべて株主に還元させることもできます。
実際は利益の一部を株主に還元し、残りを内部留保なり、設備投資なり、人的投資なりに割り当てます。
この利益の一部還元が配当金にあたります。
利益に対する配当金の割合のことを配当性向といいます。
配当性向はおおよそ30%位が目安となります。
この配当性向が高いと、高配当株となる傾向にあります。
では、”なぜ配当性向を高くするのか”、逆に”なぜ配当性向が低い企業もあるのか”ですが、
それはどちらも株主のためです。
企業は営利を目的としているので基本的に株主の利益となるように行動します。
株主の利益とは株式によるインカムゲイン(配当金)や、企業価値向上によるキャピタルゲイン(売却益)です。
歴史の浅い企業や、IT産業等の成長産業では、株主の利益はキャピタルゲインを重視します。
株主にとって、高い成長を続ける企業から高い配当を出してもらうよりも、配当金は削って、将来への投資にあて、企業価値を向上させた方が利益が大きいということですね。
逆に歴史の長い企業や、対象としている市場の伸びが低い場合、利益を使って自社の人材や設備に投資する金額が小さくなります。
こういった企業では、自社への投資額が小さいので、利益が剰余金として積みあがっていきます。
株主から見れば、投資する気がないお金を貯めても、何らリターンが得られないので、余っている利益を分配して欲しいと思います。
これが、高配当になる理由です。
これらのことから、高配当株は成長性が低く、結果として長期のリターンが市場全体から見て小さくなる傾向にあります。
高配当株がおすすめな人
次に、高配当株の特徴から、高配当株がおすすめな人について、年齢別で解説していきます。
高配当株の特徴
- 株式市場全体から見てリターンが小さい傾向にある
- 配当金は不況時でも比較的安定しているので、比較的安定したインカムゲインが得られる
- 長株や市場平均と比較して、株価の値動きがマイルド
20代、30代
まず、若い年代の方は長期投資で高配当株はあまりおすすめしません。
老後に向けて資産形成するなら、資産の運用期間は40,50年あります。
高配当株に投資した場合、市場全体への投資と比べ、リターンが小さくなり、
それが長期になると、大きな差となります。
上に示した配当金再投資のチャートでは8年で1.44倍のリターンの差がありますが、
これが仮に40年間続くと、6.19倍のリターンの差となります。
長期では大きな差となる可能性ありますね。
40代
40代となると、老後に向けて投資するなら、残りの投資期間は20,30年です。
まだまだ投資する期間が長いとは言え、出口も考えつつ投資する必要があります。
老後には資産を取り崩しながら生活していくことになると思うので、
とりくずし時期に株価の暴落が起きると、気が気ではないでしょう。
そのため、40代は老後に向けたポートフォリオを意識した投資を行うことをおすすめします。
毎月の積立に高配当株を一部に組み入れを検討する頃合いかと思います。
50代以降
50代以降は老後に向けて投資するなら、残り投資期間が10年,20年くらいです。
老後の資産取り崩し期に資産の変動幅を抑え、比較的安定した配当収入を得るためには、
50代以降は高配当株の比率を高めた方が、良いと思います。
加えて、資産全体の価格変動を抑えるため、債券や金など株式と異なる値動きをする資産も組み入れたポートフォリオで守りの資産運用を行うことをおすすめします。
結論:高配当株は資産を取り崩していくタイミングを見据えた年齢におすすめ
まとめ
- 高配当株は市場全体のインデックス株に対して配当込みでも長期的なリターンは負ける傾向
- 高配当株は市場全体のインデックス株に対して値動きがマイルド
- 高配当株は資産を取り崩す高齢期が近くなったときポートフォリオに組み入れを検討したい